診療内容について

1. 顔面神経とは

顔面神経とは脳神経といわれる重要な神経の1つです。 脳幹にある顔面神経核から神経線維が内耳(鼓膜の内側)を通って顔面を中心とした臓器に枝を伸ばしており、大きく3つの役割を果たしています。まず、1つ目は眼輪筋・口輪筋といった表情を形成する表情筋や外部からの音を調節しているアブミ骨筋の筋肉の運動に関係した役割。そして、2つ目は涙を分泌する涙腺や鼻汁を分泌する鼻腺、唾液を分泌する顎下・舌下腺への分泌刺激をもたらす役割。最後に、3つ目は舌の前方2/3に存在する味蕾で味を認識する役割です。

顔面神経の役割
運動線維
表情筋(眼輪筋・口輪筋など表情をつくる筋肉)の調節
アブミ骨筋(音の調節をする筋肉)
分泌副交感神経線維
涙腺・鼻腺・顎下腺・舌舌腺の分泌
味覚線維
舌前方2/3で味を知覚

2. 末梢性顔面神経障害(麻痺)

この神経線維の枝が障害された状態を末梢性顔面神経障害(麻痺)と呼びまず。これと対になるのが中枢性顔面神経障害(麻痺)であり、脳から神経核までの障害を示します。これらの神経線維が走行する領域には当科が取り扱っている多数の臓器が存在しており、専門的な関わりを持って検査・治療をおこなっています。

※その他、場合によって味覚異常や聴覚過敏など併発する場合もあります。

注意事項
<この他に麻痺側の帯状疱疹を伴う場合や耳だれ・口内炎症状がある場合>

早期に医療機関への受診をお勧めします。
→後述のRamsay-Hunt症候群と呼ばれ帯状疱疹ウィルスが関係している
やや改善が困難な状態の場合があります。

<手足の動かしづらさを伴う場合やしゃべりにくいといった症状がある場合>

まず当科ではなく脳神経外科や神経内科等への受診をお勧めします。
→末梢性顔面神経麻痺というより中枢性顔面神経麻痺が強く疑われます。
中枢性の場合は治療法が異なることがあります。

末梢性顔面神経障害(麻痺)の症状
  • 片目が閉じない、または閉じにくい
  • 飲み物・食べ物が口の端からこぼれる
  • 片側の顔のしわがなくなる

3. 原因

大きく分けて4種類のタイプに分類されています。

  1. 1. Bell麻痺(特発性顔面神経麻痺)

    抹消性顔面神経麻痺の約70%が原因不明である。HSVというウィルスの影響や血流障害、自己免疫病との関連など様々な説がある。約70%自然に治り、加療により90%が改善するといわれており、予後は良好とされている。

  2. 2. Ramsay-Hunt症候群

    抹消性顔面神経麻痺の20%がこれにあたる。もともと小さい頃に感染している帯状疱疹ウィルスが何らかの原因により再活性化することに発症する。顔面神経麻痺症状の他に耳周囲の帯状疱疹(発疹)や耳漏・口内炎・耳鳴りやめまいを伴うことがあります。自然に治るのは30%程度で予後はやや不良とされている。

  3. 3. 外傷性・手術加療性

    主に頭蓋骨の骨折や耳・顔面の手術施工後に出現する。早期発症のものは予後が悪く手術加療する場合もある。

  4. 4. その他

    先天性・内分泌性・代謝性疾患、顔面神経が走行する経路に腫瘍性疾患などがあることによって出現する。画像検査などを行い、各々に沿った治療を施行する。

4. 検査

当科では末梢性顔面神経麻痺について以下のような検査をおこなっております。

● 表情筋スコアリング(柳原法)

評価項目 正常 不完全麻痺 完全麻痺
安静時 4 2 0
額のシワ寄せ 4 2 0
弱閉眼 4 2 0
強閉眼 4 2 0
片目つぶり 4 2 0
鼻翼のふくらませ 4 2 0
頬のふくらませ 4 2 0
口笛運動 4 2 0
「イー」という口 4 2 0
口をへの字に曲げる 4 2 0
20点以上 軽症
18〜10点 中等症
8点以下 重症
● 誘発筋電図検査(ENoG)

発症から約10日~14日経ってから施行する検査。表面電極を用いて顔面神経の枝に刺激を送り誘発筋電図を記録する方法。※予後診断目的
患側の誘発筋電図振幅が健側の10%以下のとき予後不良といわれています。

● その他

部位診断:味覚試験・あぶみ骨筋反射(SR)・シェルマーテスト
感染検査:水痘・帯状疱疹抗体検査(IgG・IgM)  など必要に応じて 

5. 治療

末梢性顔面神経障害(麻痺)は症状が出現してから約7~14日かけて徐々に悪くなってゆきます。基本的に治療法はこの悪化をできる限り抑えて、神経が自己治癒してゆくのを経過観察することとなります。そのため、発症から7~14日まで(できるだけ早期)に医療機関へかかり加療を受けることをお勧めします。

<代表的な治療法>

まずはこれらを組み合わせた内服もしくは点滴加療をおこないます。
糖尿病や緑内障などの基礎疾患がある方はステロイドにより状態悪化する危険性があるため総合病院で加療を受けられることをお勧めします。
※この加療で改善を認めず症状が重篤な場合には頭蓋内手術をおこなうこともあります。
その他、当院にはありませんが形成外科では固定した末梢性顔面神経障害(麻痺)に対し再建術等をおこなう施設もあります。